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タンポポエキスの視床下部、下垂体を中心とする排卵機能賦活作用

大阪大学 邵輝、佐藤道夫


■ 要旨

中国、ドイツでは昔から産婦人科領域において、タンポポは比較的よく使用されており、特に卵巣機能不全、不妊症、更年期障害などの臨床に使用されてきた。西洋医学の観点からは、視床下部、下垂体、性腺系の内分泌学的な機序への関与が推察される。Sprague−Dawley系雌幼若ラットを使用して、タンポポエキスの排卵への効果および視床下部−下垂体−性腺系への影響を検討し、LH−RH分泌を中心として考察を加えた。脳内神経伝達物質、ニコチン性アセチルコリン受容体、視床下部内LH−RHの有意の増加が観測され、視床下部より上位中枢への効果が推察された。タンポポエキスの視床下部、下垂体を中心とする排卵機能への賦活作用が推察された。


■ 実験方法および結果

 今回、排卵障害、不妊症などの治療で使用されることの多いタンポポから抽出したT−1成分を中心として、その作用機序については内分泌学的に検討を加え、LH−RH分泌の観点から排卵および中枢への効果を検証したい。

1. 排卵への効果

 文献によると、卵巣機能不全、不妊症、更年期障害、切迫早産などの婦人科領域において、タンポポは若い世代から老年期まで幅広く使用されている。卵巣機能不全に関しても、第1度無月経、無排卵周期症、黄体機能不全などの臨床にタンポポが応用されている。タンポポエキスの作用機序としては、主として視床下部−下垂体系に作用し、下垂体から卵胞および黄体刺激ホルモン(FSH、LH)の分泌を通して卵巣機能を賦活することが推察されている。

<実験1> 視床下部、下垂体機能の活性化
タンポポエキスは幼若ラットにおける排卵に対して効果を示した。自然の周期であれば、生後38日目に排卵が認められるSprague-Dawley系雌幼若ラットを使用する。

(1)生後25日から31日までタンポポエキスを単独で1週間投与したもの、(2)生後25日から31日までタンポポエキスとhuman menopausal gonadotropin(hMG)を併用して1週間投与したもの、(3)hMGを単独投与したものにおいて、それぞれ排卵をみた。

これにおいて、(1)のタンポポエキス単独投与では54%、(2)のhMGとの併用投与では89%、(3)のhMG単独投与では65%に排卵が認められた。

これらの事実はタンポポエキスが直接または間接的に視床下部、および下垂体機能を活性化することを示唆している。

<実験2> 排卵率が上がる
Sprague-Dawley系雌幼若ラットを用いる。生後38日よりタンポポエキスを体重1kgあたり36mgを連日経口投与し、排卵について両側卵管内の卵子の数を顕微鏡下に確認した。結果は、タンポポエキス投与群の排卵は、対照群と比較して20%の上昇が認められた。


2.中枢への作用

<実験1> タンポポエキスは下垂体内のLH、FSH量を増加させる。
 Sprague-Dawley系雌幼若ラットを用いる。タンポポエキスを体重1kgあたり36mgを連日経口投与したところ、下垂体内のLH、FSHについては生後29日で変化が認められた。血中LHは対照ラットの0.75ng/mLに対して、タンポポエキスを投与したラットは1.1ng/mLであった。また、血中FSHは対照ラットが1.1ng/mLであったのに対して、タンポポエキスを投与したラットは5ng/mLであり、有意な増加が認められた。

<実験2> 神経伝達物質への影響
タンポポエキスの卵巣での排卵促進効果については判明したが、同時に脳細胞のレベルでタンポポエキスがどのような影響を与えているかについて調べた。同じラットにおいてタンポポエキスを投与した生後29日目のラットの脳中のノルエピネフリン(NE)、ドーパミン(DA)、セロトニン(SR)を測定した。タンポポエキスを投与したラットは対照群と比較して、NEは7.2倍、DAは6.8倍と明らかな増加を示した。SRについては0.15倍と増加傾向のみであった。


■ 考 察

幼若ラットにおいて、タンポポエキスの排卵促進作用が認められた。視床下部内LH-RHの増加、下垂体内LH、FSHの増加が認められ、作用部位としては、視床下部−下垂体系として考える。さらに、神経伝達物質、NE、DA、SRの増加がみられたが、これらの物質は痴呆とも関係が深いとされており、タンポポエキスの薬理作用の多様性が期待される。

※この論文は1997年11月に第15回ライフサイエンスで発表されたものであり、肩書き等は当時のものを使用している。